同時に、彼が夏々子を育てて、守ってきたのだと言うことを知らされた。

本当なら、実の母親である自分が全てやることだった。

「――私は…私はあの男に騙されたんです…。

あいつに騙される形で、あの子を手放してしまったんです…!」

岡島の声は震えていた。

「あの男は、最低な男でした。

酒を飲んでは私たちに手をあげて、酒がなかったら暴れて…。

前科が3件もあって、そのうえ刑務所に入っていたと言う過去を知ったのは、私が男と籍を入れた後でした。

私は、別れて欲しいと男に頼みました。

男は“いい働き口を紹介するから、そこで金を稼いでこい”と、蟹工船のアルバイトを私に紹介してきました。

私がそこで働いたお金を手切れ金として受け取ってやると、男は言いました。

だけど私が逃げないために、娘は人質としてそばに置いておくとも言われました。

また娘と一緒に暮らせることを夢見て、私は蟹工船へと乗りました」