ケリーの後ろ姿が見えなくなると、
「試合に向かう選手って感じやね」

荒畑が言った。

「彼女の強さは、僕も見習わないといけないと思っています」

呟くように言った後、宗助は額にペットボトルを当てた。

「強い、ですかね?」

そう言ったのは四月一日だった。

「私は、頼って欲しいと思っています」

宗助は訳がわからないと言うように首を傾げた。

「確かに敬子は強い人かも知れません。

だけど、本当は弱い人です。

弱い部分を隠すために、彼女は私たちの前では心配かけまいと強いフリをしているんです。

敬子の弱い部分をフォローしたいから頼って欲しいのに…」

四月一日は今にも泣きだしそうだった。