「今のところはだけど、大丈夫になってきたみたいだ」

宗助は瑛太と桑田にアイコンタクトを送った。

瑛太と桑田はわかったと首を縦に振ってうなずいた。

「途中で止めて悪かった」

宗助が夏々子から離れた。

運び出されていた観客のシーンを頭から追い払うと、夏々子は大きく深呼吸をした。

宗助がベースを鳴らしたのと同時に、夏々子がシャウトをした。

2曲目は10枚目のシングル『クレオパトラ』だ。

夏々子がマイクスタンドからマイクを外して歌い出した。

会場は夏々子にあおられるように、再び盛りあがりを見せた。

暴れているギターと激しいドラム、そして真夏の太陽に負けないと言うように歌っていたら、
「止まれー!」

それ以上に大きな宗助の声と肩をつかむ手に止められた。