後ろ姿を見送り、『福禄寿』に戻ろうとした時、
「一体誰なんだ?」

その声に、後ろを振り返った。

「――本山さん…」

本山だった。

「シラタマ、俺の質問に答えろ」

歩み寄ってくる本山に、宗助は茶封筒を胸に抱えた。

「そう言えば、15年前もそうだったな。

俺にさっきのヤツとの取引を見られて、こうしてお前に質問した。

だけど、15年前もお前は俺の質問に答えなかった。

そして、お前はマネージャーを辞めたうえに事務所も辞めた」

「――ッ…」

宗助は返せないと言うように、目を伏せた。

「シラタマ、お前が事務所を辞めたのは俺のせいか?」