「兄貴…久しぶりだな」

「ああ、久しぶり。

ずいぶん大変だっただろ?」

「まあな、今は違う意味で大変だけど」

「国民アニメ映画の主題歌を歌うことになったんだって?」

「何だ、知ってるのか」

「当然」

彼は得意気に笑った後、ショルダーバックから茶封筒を取り出した。

「いつも悪いな」

茶封筒を受け取ると、お礼を言った。

「歌うことがお前の仕事なら、俺は調べることが仕事だ」

「1杯奢るから飲んでくか?」

彼は首を横に振ると、
「まだ仕事が残ってるんだ、じゃ」

右手をあげると、その場から立ち去った。