「本当に、1人で行くのか?」

そう聞いた宗助に、
「俺、もう28っすよ?

1人で実家に帰れますって」

瑛太は笑いながら言った。

「10年以上も帰らなかったから家族の顔を見るのは怖いですけど…ちゃんと向きあいます」

宣言するように言った瑛太に、
「そうか」

宗助は一言返事をした。

「紅葉まんじゅうを買ってきますね」

「どうせなら紅茶か酒にあうものを買ってこい」

瑛太はクスクスと笑いながら、広島行きの高速バス乗り場へと向かった。

彼の後ろ姿を見送り、自分もその場から立ち去ろうとした時、
「――宗助?」

懐かしい声に呼び止められた。