* * *

最初に彼女に教えたことは“夜に眠ること”だった。

彼女に出会って4日目の夜、宗助は眠っていた目を開けた。

ベッドのうえで寝返りを打つと、隣で眠っていたはずの夏々子がいないことに気づいた。

「――なっちゃん?」

躰を起こして部屋を見回すと、夏々子は窓の外を見ていた。

「何してるの?」

宗助はベッドから出ると、夏々子に声をかけた。

夏々子はビクッと躰を震わせた後、宗助に視線を向けた。

宗助は歩み寄ると、
「そんなところにいると、風邪をひくよ?」

夏々子の隣に並んだ。

「寝ようか?」

そう言った宗助に、夏々子は首を横に振った。