「こいつ、マネージャー時代に俺らから“ボクちゃん”っていじられるのが嫌だったから、自分のことを“俺”って呼んでたんだよ」

本山に笑いながら言われた宗助は何も言い返せないと言う顔をしていた。

「まあでも、玉井くんが何も変わっとらんでよかったよ。

ベーシストでヴォーカリストで、そのうえ経営者としての顔も持っとるから不安やったんよ。

変わったな、俺らのことを忘れとるんやないやろかって」

荒畑が言った。

宗助は口をおおっていた手を離すと、
「忘れてる訳ないでしょ。

と言うか、あなたたちにひどい目にあわされた思い出しかありませんけどね」

呆れたように返した。

「まあ、“何てこったパンナコッタ事件”は仕方がないな。

あれは事故だ、事故」

笑いながら言った本山に、宗助は思い出したくないと言う顔をした。

「…どんな事件だったんすか?」

そう聞いた桑田に、
「…早く出てくぞ」

宗助が苦い顔をしながら呟いた。