夏々子は、目を開けた。

躰を起こすと、まぶしい太陽の光が自分を迎えた。

――懐かしい夢だった。

8歳のバレンタインデーの日、宗助に出会えたことで自分は生まれ変わった。

宗助に与えられたものは、名前だけじゃない。

歌うこと。

ギターとベースを弾くこと。

与えられたものや教えられたものはたくさんある。

「――ソウちゃん」

夏々子は8歳の頃から呼んでいる宗助の名前を呼んだ。

床のうえにほったからしだったスマートフォンを手にとった。

「――ソウちゃん、今助けに行くからね」

夏々子は言い聞かせるように呟いた。

たとえ自分の身に何があったとしても、宗助だけは守る。

今、それを果たす時がやってきた――。