宗助は納得したように首を縦に振ってうなずくと、
「そうか、6月か…。

夏生まれなんだね」
と、言った。

6月は雨が降っているイメージがあるのに、何で夏生まれなんだろう?

少女はそう思ったけど、口には出さなかった。

宗助は考えるように口を閉じた後、
「――“夏々子”、って言うのはどうだ?」
と、少女に聞いた。

「――ナナコ?」

少女は聞き返した。

「夏生まれだから、“夏々子”にしたんだ」

宗助はそう言って、少女の顔を覗き込んだ。

「イヤ、だったかな?」

そう言った宗助に、少女は首を横に振った。

宗助は嬉しそうに笑うと、
「じゃあ、今から君の名前は“夏々子”だ」

少女――夏々子を抱きしめた。