それから男は笑うと、
「君はおもしろいことを言うんだね」
と、少女に言った。

「そうだ」

男が思い出したと言うように言った。

「まだ、名前を聞いていなかったな。

俺は玉井宗助、君は?」

男――宗助に、少女は首を横に振った。

「知らない…名前、わからない」

そう答えた少女に、
「そうか」

宗助は呟くように返事をした。

「じゃあ、誕生日は?

俺は5月5日、君は?」

質問を変えた宗助に、
「…6月、14日」

少女は答えた。

自分の誕生日を祝ってくれる人はいなかった。

なのに、どうして彼は誕生日を聞いたのだろう?