男は悲しそうに眉を下げると、
「俺のところにくるか?」
と、聞いた。

(――あたし、天国へ行けるのかな…?)

少女は思った。

「一緒に行くか?」

男が少女に手を差し出した。

この手を受け入れれば、自分は死ねるんだと思った。

望み通り、この世からいなくなることができる。

そのことに、迷いはなかった。

両親も義理の父親も…みんな、自分がこの世から消えることを望んでいる。

少女は差し出された男の手に、自分の手を重ねた。

男は少女を抱きあげると、コートの中に少女を入れた。

「すぐ近くにホテルがあるから、まずは躰を温めよう」

男は少女に言い聞かせた。