頬に当たっているのは雪なのか涙なのか、それすらもよくわからない。

両親には捨てられ、義理の父親には暴力を振るわれる。

自分は、もうこの世で生きている資格なんてないのかも知れない。

足の感覚は、もうなかった。

少女は、雪のうえに倒れ込んだ。

――自分が邪魔だと言うなら、望み通り消えてあげよう。

そう思うと、少女は目を閉じた。


「――おい、大丈夫か!?」

その声に閉じていた目を開けると、黒い帽子に黒いコートを身につけた男だった。

神様が、迎えにきたんだ。

少女はそう思って、また目を閉じようとした。

「目を閉じるな!

死ぬぞ!」

男は少女の肩を揺すった。

少女は目を開けて、男を見つめた。

男の唇が動いた。

「――身寄りがいないのか?」