足音が聞こえる。

その足音は自分の方へ向かってくる。

躰を小さくして、足音が遠ざかるのを待つ。

足音は止むどころか、どんどんと近づいてくる。

早く行って…。

あたしがここにいることに気づかないで…。

お願い…。

こないで…。

拳が振り下ろされる。

何度も何度も、自分に向かって振り下ろされる。

躰に蹴りが襲う。

痛いよ…。

躰が痛いよ…。

やめてよ…。

やめて…!

やめて…!

「――やめて、お義父さん!」

悲鳴のような自分の声に驚いて、夏々子は目を開けた。