「そう」

荒畑は呟くように返事をした。

その時、テーブルのうえに置いてあった桑田のスマートフォンが震えた。

桑田はスマートフォンを手にとると、耳に当てた。

「もしもし?

ああ、律子か」

桑田の妻、律子からの電話のようだ。

さっきまで悔しそうな顔をしていた桑田の顔が柔らかくなる。

「俺?

大丈夫だよ、ただマスコミのヤツらに居場所を感づかれたらしいけど。

そっちは?

…そうか、無事で何よりだよ、うん。

翔平はいるか?

変わってくれ、声が聞きたい」

桑田の顔が父親の顔になった。

「翔平、お父さんですよー」

彼の様子を微笑ましく見ていた瑛太に、
「桑田くん、お子さんの声が聞けて嬉しいみたいやな」

荒畑が微笑ましそうに言った。