「それよりも…」

宗助の呟くような声に、
「何やか?」

荒畑は答えた。

「――なっちゃんは、どうしているんですか?」

そう聞いた宗助に、
「自分よりも、ナナコちゃんが心配なんやね」

荒畑が返した。

「当然ですよ…」

宗助は呟くように返したのだった。

「時間だ」

看守の声が響いた。

荒畑は椅子から腰をあげると、
「またくるわ」

宗助に一言言うと、背中を見せた。

彼が出て行くまで、宗助は荒畑の背中を見つめた。