「――何よ、これ…」

自分は、まだ夢を見ているのではないかと思った。

スマートフォンが手から落ちる。

手から落ちたそれは、ガンッと音を立てた。

「なっちゃん!?

もしもし、なっちゃん!?」

スマートフォンから桑田の声が聞こえたとなると、壊れてはいないようだ。

夏々子はテレビの前を動くことができなかった。

「ベイビー・スターダストの玉井宗助さん、42歳が殺人の容疑で山梨県警に逮捕されました」

テレビの中の女性アナウンサーがニュースを告げる。

女性アナウンサーの隣には、宗助の顔写真があった。

「――ウソ、よ…」

ウソだって言って!

夢だって言って!

夏々子は女性アナウンサーの声から逃げるように、両手で両耳をふさいだ。

テレビから目をそらすように、強く目を閉じた。