* * *




「………ちっ…」



夕暮れ、弥生の手には缶コーヒー。





……情けない。


勢いで出てきてしまったものの、いつあの家に帰ろうか。







兄さんの彼女。


別に彼女が欲しいんじゃない。





彼女を奪われて、くやしがるそんな兄さんの表情が見たいだけ。













僕から自由を奪った兄さんの屈辱に苛まれる顔を…。






カーンッ




「……………。」






グシャッ


弥生は投げた缶コーヒーを左足で踏み潰し、歩き始めた。