そんな冷静な考えすら、いつしか彼の熱に触発されてか……何も考えられなくなっていた……………。
* * *
「あ、もう4時…」
すでに稚尋の家に来てから一時間が過ぎようとしていた。
「もう帰るの?」
その、淋しそうな子犬のような稚尋の瞳はまたあたしの心をくすぐった。
卑怯だよ。
その瞳は。
「…んー…あ、ちょっとトイレ」
「あー、逃げるー」
その場を逃れるために、あたしはお手洗いに立った。
パタン。
と言っても別に本当にトイレに立った訳ではない。
ただ、気持ちをおさえるために。
あの、透き通るような瞳で見つめられたら、断れなくなる。
それは彼の…媚薬のように。
あたしにしかきかないの。
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