* * *


後に取り残された弥生。



澪が視界から消えた瞬間、今まで笑顔だった弥生の顔が瞬時に崩れた。





「あの人が……兄さんの彼女か…」


随分と、整った綺麗な人だった。






兄さん。


兄さんはずるいよ。





僕がずっと欲しかった物を、全て持っているのは……兄さんなのに。






その兄さんの自由のために、僕がどれだけ苦しい時間を過ごしたかわからないでしょ。








だから。


兄さん、僕と代わってよ。








僕に自由をわけてくれよ。

















「さて……と」




弥生は肩にかけていた大きなバックをまた肩にかけ直し、歩き出した。








ある場所に向かって。