「私、将来の約束をされただけだから」
「……へ? ぷ、プロポーズ!?」
冬歌が大袈裟に驚くと、稚尋は顔を真っ赤にして言った。
「気が早い!! そういうのはこれからっつーか、もっと色々計画してからだ!!」
どうやら彼もまた、澪に負けず劣らずのロマンチストだったらしい。
同時に真っ赤になる若いカップルを前に、冬歌は心咲の頭を撫でながら声を出して笑っていた。
「よかったね、澪」
出会った頃からいつも保健室で泣いていた少女が今、目の前で顔を真っ赤にしながら幸せそうに笑っている。
出会った頃から大人びていて、感情を表に出さなかった少年が、目の前で喜怒哀楽を表し、顔を真っ赤にしながら幸せそうに恋人を見つめている。
それは、2人を見守ってきた大人である冬歌にとって、何よりも嬉しい瞬間だった。
この2人なら、きっと大丈夫。