「おじゃまします」
稚尋に手を引かれ、澪はミサキの後を追う。
台所からは、芳ばしい香りがした。
「冬ちゃん?なんで家に……」
台所では、稚尋の姉の冬歌が優雅に朝食を堪能していた。
澪の家、で。
ミサキが冬歌を見つけ、満面の笑みを見せ、抱きついた。
「ママ!!」
先ほどとは、声のトーンが違う。
明らかに、澪と稚尋に向けた『ママ』とは違う、高いトーン。
だとしたら、この子は……?
「おーっ!心咲<ミサキ>!澪おねーちゃんを起こしてきた?……あれ、稚尋も一緒?何で?」
冬歌はこちらに気がつくと、心咲を抱き上げながら稚尋の存在に首を傾げた。
首を傾げたいのはこちらの方だが、澪は言葉を飲み込んで代わりにため息をつく。
「それはこっちのセリフだっつーの。心咲ほったらかしにして、何ノンキに朝飯食ってんだ?」
「えー…だって、朝宮のお母さんに頼まれちゃったんだもん。『澪をよろしくお願いします』って」
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