『ちーって笑うとマユゲ下がるんだねー!雛もれんしゅうするっ』
まるで、あの頃のようだ。
いつまで経っても、きっと雛子の中には兄さんの面影があり続けるのだろう。
兄さんは雛子の初恋の人で、僕らの幼馴染みで。
「雛、それって……」
「ねぇ、弥生……」
“僕ら”の大切な女の子だったから。
“好き”
弥生は確かに雛子にそう言おうとした。
しかし、その言葉は雛子によって掻き消される。
でも。
それでもいいと思った。
「ん?」
遠慮がちに掴まれた弥生のシャツの袖。
今の弥生には、それだけで十分だった。
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