混乱する弥生の横で、雛子はうつ向いたまま。
しかしボソリと何かを呟く雛子。
その言葉に、弥生は自分の耳を疑った。
「今日は……失恋したの忘れようとして、思いっきりはしゃいだの。そしたら、なんでかな……」
「何?」
「あんただったからかなのかな……凄く、楽しかったの」
「えっ」
ズルい。
それは反則だ。
そんなこと言われたら、嫌でも期待してしまうじゃないか。
脈なんてないことくらい、随分前から知っている。
割りきった関係だったはずだ。
そのはずだったのに。
「変だよね、弥生のことなんて……大嫌いだったはずなのに」
雛子はそう言って、眉を下げて笑った。
まるで、兄さんの癖のように。
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