僕が雛子を引っ張らなくちゃ。
彼女は傷心で、僕はそれに漬け込む悪い男。
でも。
「ガキのくせに……生意気」
それでいいや。
「ガキだから、生意気なんだよ」
紅潮した雛子の頬に弥生はまだ気がついていない。
強く握りしめられた右手は、決して離れることがないように、しっかりと繋がっていた。
「バカ……」
ねぇ、兄さん。
兄さんはバカだよ。
この子を、手放してしまうなんて。
僕なら絶対手放さないのに。
「バカで結構♪」
ニコリと笑ってみせる。
そう、これが僕。
「憎たらしい笑顔」
何を言われてもいい。
今、この時が。
つかの間でも、この時間が続くのならば。
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