僕は……弱虫だ。
「ねぇ、弥生」
首を項垂れている弥生に、雛子が言葉をかける。
「今日はね、お父さんのことも、お母さんのことも、忘れていいんだよ?」
「……え?」
突然の話題に、まともに返答を返すことが出来なかった。
そんな弥生の反応に、雛子はため息をつく。
そして。
「今日の弥生。全然笑ってない!いつもの嫌味な笑顔はどうしたの?……ほら行くよ!!」
「ちょっ……えぇっ!?」
雛子は弥生の右手をとった。
雛子の手。
僕よりちっちゃな愛しい手。
そうだ。
僕は笑顔を忘れていた。
彼女に、気を使わせただけだ。
「ごめん。」
それでも、彼女に引っ張られるなんて、男として失格だな。
「え?」
「行こう!」
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