〔…………え〕




ポタリ








その瞬間、雛子の頬を一筋の涙が伝った。





それには雛子自身も驚いてしまった。




拭えど拭えど頬を伝う涙。










“フラれちゃった”






今さらになって、その言葉がやけに真実味を帯びて、胸に深く突き刺さった。











「……っ……バカッ!あんたのせいで…雛……」











〔……ひ、な〕




電話越しの声が余計に涙を誘う。





きっと、予想以上に辛かったんだ。

自分が思っているより、ずっと。






きっとそう。










〔雛子〕







「な、に……っ…なによぉ……」






情けない。


相手は年下で、稚尋の弟で。嫌っていたはずの相手なのに……。














本当に、情けない。















曇る視界を拭いながら空を見上げる雛子の耳に届いた弥生の声。
















ああ。









彼は、こんなにも大人だったのだろうか。