「弥生はさ、彼女とか、いるの?」




嗚呼。




何を言っているんだろうか。



自分は。






〔いない、よ〕






「じゃあ好きな子は?」





〔……いない〕







電話の向こうで一瞬の沈黙が流れ、それが彼の嘘だと思った。






…いるんだ、好きな子。




そりゃ、中学二年生だし、多感な時期だろうからいない方がおかしいのかもしれないけど。






弥生が人を好きになるなんて、想像出来なかった。








「いるんだ〜!好きな子!」




誰もいない星空のもと、雛子の声だけが響いていた。






〔い、いないって言ってるだろ!?〕





「あ、素が出た」









「!」





電話口で慌てたような吐息が聞こえた。






そう。



これが彼自身の本来の性格なのだ。





大人びていて、あまり友達を作ろうともせず、子供らしさを感じさせない表面上の弥生。





しかし本来は、思った以上に未熟で外見ではわかりにくい程に子供じみている弥生。













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