「いいの?って何よ、いいのって…あんた、ハハッ…バカ?」




気さくに話せている。



その事実が妙に胸につまった。





〔…ごめん〕





「言っておくけど、雛。すぐそうやって謝る人は嫌いだからね」



〔…えっ〕





軽く雛子が毒をはくと、慌てた様子の声が聞こえた。




今思えば、昔のあの弥生に対する態度はただのヤキモチだったのかもしれない。

それか、ただの同情だったのかもしれない。



恵まれない環境で育った稚尋に同情し、守りたいと思う感情を勝手に恋だと勘違いしていたのかもしれない。



そう思うと、今までの行いがすべて馬鹿らしくなった。





全部全部、自分の空回りだったのだと。




「…弥生。」



電話の向こうで雛子の返事を待つ弥生の名前を呼んだ。




一秒。




二秒。


返答がなかったあと、小さく返事が返ってきた。





〔はい〕




弥生があまりにかしこまった言い方をするせいで、思わず笑いをこらえる。



ここまで彼を可愛く思えたのは初めてではないか。そう思える程、今の彼は幼く、気弱だった。


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