「雛、あとこれからしばらく一人なんだよね。澪は稚尋と一緒だし?だからさ、」
傷心の自分を悟られたくはないけれど、心の底では慰めてくれる人を求めていた。
「あんたがいいなら、もうちょっとだけ付き合って」
様子がおかしい幼なじみの彼に、そっと、小さくそれだけ言った。
すると、雛子の耳に聞こえてきたのは弥生の声。
電話越しで弥生は静かに返事をした。
携帯を持つ手だけに力が入っていた。
〔…いいの?〕
「は?何が」
一瞬、問われた意味がわからずそんな言葉を返したが、それが通話を続けてもいいのかと言う問であると気づいた時、雛子は思わず笑ってしまった。
ようやく、笑うことが出来た瞬間だった。
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