連れてこられたのは学校裏の小川。
特に外灯もなく、明かりと言えば夜空に光々と輝く満月くらいだ。
相変わらず、稚尋が澪を引く腕の強さは変わらない。
「ちょっ…稚尋!…痛いってばっ!!」
「…………」
「稚尋!?」
怒ってるの!?
「稚尋ってば!!」
「いやー…ちょっとムカついてさ」
ピタ。
急に足を止めた稚尋の背中に激突しながらも、澪は涙目で稚尋を見た。
ムカついた…?
何に?
「…は?」
「んー…いや、こっちのこと!学校とは言え、夜まで一緒にいられるなんてさ?滅多にないだろ?」
キュッ
言葉と共に間合いを詰められ、尻餅をつきそうになる。
「ぅわ!?」
ガシッ
地面につく前に、稚尋が受け止めてくれたからよかったようなものだけど。
「っとに危ないんだから…」
「だ、だ、誰のせいで!」
「ん?…わざと」
抱きしめられる腕の強さもなにもかもが…私を虜にして放さない。
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