そんな弟の変貌ぶりに兄はただ、驚くことしか出来ずにいた。


「…お前…頭打ったの?」




一瞬、本気で心配になって弥生の額に触れようとしたが、スルリとかわされてしまった。


それと同時に弥生のさらさらの黒髪が宙に舞った。





「何にもないよ。相変わらず失礼な兄さんだよね?弟がせっかく改心するって言ってんのに」


はぁあ…と弥生は露骨に呆れた表情を浮かべた。


そんな弥生にムカつく半面、呆れる自分がいた。





「勝手にしろ」


本当は俺だって素直に言えたらどんなに楽になれるだろう。


言ったら総てが楽になれることくらい知っていたが、どうしても。


稚尋のプライドがそれを許しはしなかった。






悔しそうに唇を噛み締める稚尋を見て、弥生は口角を上げながら口を開いた。






「…僕、卒業したら…正式にここに住んでもいい?」


その言葉に青ざめたのは紛れも無く稚尋。


「やめてくれ…!」





本気で弟の行動を制止しようと思ったのは初めてかもしれない。



本気で止めに入る兄を見て、弥生は悪戯な笑みを浮かべた。