俺が拒絶していたのは紛れも無い事実。
だけどそれはただ弥生が憎かった訳じゃない。
ただ単に、寂しかったのだ。
「……………」
自分だけが家族の中で取り残されている事が。
どうして血を分け合った兄弟なのに、こうも違うのか。
幼過ぎた稚尋にその意味が理解出来る筈等なく、簡素な考えを巡らせた揚句。
「兄さんは…ほんっと!昔っから馬鹿だよ!!馬鹿過ぎる!」
総て弥生がいけないんだ。
弥生がいるから俺は一人ぼっちなんだ……
行き場のない孤独を隠すかのように、総てを適当な理由をつけ、弥生になすりつけた。
その時の感覚が未だに消えないせいでつい、今も弥生にきつくあたってしまうのだった。
「馬鹿馬鹿いうな!」
「だって馬鹿じゃん!…僕の方が頭だっていいし、足だって速いよ!?なのに…どうして自由になれないんだよ……」
そう言うと、弥生は唇を噛み締めながら俯いた。
結局、兄弟は同じ籠の中にいるだけなのだ。
.