稚尋はそのまま、頭を片手で抱えた。



「何、それ…」





「俺を傷つけたいなら、無理矢理にでも澪を奪えばよかっただろ。怖かったのか?それとも……雛を裏切るような真似は出来なかった……?」



何言ってんだ、俺。


馬鹿じゃーねーか。





こんなの、ただの八つ当たりだ。






弥生は表情一つ変えず、ただじっと稚尋を見つめていた。




稚尋の方がその迫力に圧され、思わず視線を反らしてしまいそうになるほど。



黒くなった自分の中を全て見透かされた気分になるような気がして、腹が立っていた。





「“ちー”の……ばかっ………!」



あぁ、なんてむず痒いんだろうか。


昔はそう呼ばれてたっけ。






俺が全てを弥生に押し付けて、弥生が大嫌いでしかたなかったのに。



あいつはただ、笑顔でついてまわってた。





ちー


ちー

って呼びながら。




それが、いつの間にか当たり前になっていた。