「お前、澪に話したのか!」
馬鹿だなぁと弥生を鼻で笑いながら、稚尋はそばにあったソファーに腰かけた。
そして、その手は未だかたずけていなかったタオルに触れる。
“弥生君しかいなくない?”
澪が、疑惑を打ち消したせいでややこしい事になった。
本当に弥生は俺にこんな事をしたのか?
したのだとしたら、魂胆はなんだ?
頭の中でいい考えなんて思い浮かばなかった。
これが、兄弟が今まで作って来てしまった溝というものだ。
「煩い。兄さんより頭いい自信はあるから大丈夫だよ。……兄さん?」
自分の世界に入ってしまった稚尋に気付いた弥生。
じっと自分がかけたタオルを見つめる兄に違和感を感じた。
「兄……」
「お前。俺が嫌いで嫌いでしかたねぇんじゃねーの?」
なんで兄貴、気遣うんだ?
「うん。嫌い」
だったら、なんでっ!!
「なら…なんで澪に本気で手、ださなかったんだよ?」
もう、訳わかんねーよ……
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