二人を隔離するコンクリートの壁が、この静寂に更に強さを与える。
「わかるんだよ」
お互いの声すら、凄みがます程に。
「澪さんに?」
「だってあたしは、そう言った事も、言われた事も両方あるから」
そう言って、澪は過去を思い出しながら苦笑した。
…嫌いと言ったのは、稚尋に。
無理矢理キスされて、頭ごなしに怒鳴ってしまったんだ。
あの時は、ただ怖かっただけ。
自分をこんなに好いてくれる人に出会った事がなかったから。
そして、拒絶されたのはあの時。
瑛梨が、あたしを裏切った時だ。
『呼ばないで。瑛梨の名前』
あの冷たい氷の瞳は、今も胸に刻まれてる。
そう。
どんな人間にも“裏”と
“表”は存在するのだ。
「――………だからさ。人は誰だって変わっちゃうんだよ?今、そんな気持ちないかもしれないじゃん」
あたしは、前に進む。
昔を糧に。
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