「お待たせしました。アールグレイです。」
「あ、ありがとうございます。あの・・・・・・。」
「あぁ、自己紹介がまだでしたね。僕は、小日向 洋。こっちは、飼い猫のナナです。」
「あ、あの。片山 美南です。ここは、一体どこなんですか?」
「ここは、天国と地獄の境目の世界です。僕はここで死んだ人達が安心してもらえるようにちょっとした家に住んでいるんです。」
「境目・・・・・・。あの、私は天国に行けるんですか?」
「あぁ。実は、片山さんは死んではいないんです。」
「え!?どういう事ですか?」
「貴方は、屋上から飛び降り自殺しましたが、意識不明の重体で入院しているんです。いわゆる臨死体験ですね。」
「臨死体験・・・・・・。」
(じゃあ、もしも意識が戻ったらまた・・・・・・。)
嫌な記憶が頭の中を過ぎる。
『片山さんってさ〜。正直ウザくない?』
『分かる〜!いっつもヘラヘラ笑ってるしさ〜。』
『なんかさ〜、余計なお世話だよね〜。』
会社での悪口。何日も帰れないブラック企業。
(また・・・・・・。あの時に・・・・・・。)
考えるだけで手が震える。
「大丈夫ですよ。貴方が望まない限り、現実には戻りませんから。」
(小日向さん・・・・・・。)
「あの、片山さん。実は、生き返って現実世界に戻るか天国に行くか選ぶんですが・・・・・。どうしますか?」
「ごめんなさい。今はまだ決められません。」
「そうですか。あの、僕と1週間ここで暮らしませんか?」
「え・・・・・・?」
「片山さんは、現在臨死体験状態ですので、僕と一緒に過ごして決めてもらうというのはどうでしょう?」
「1週間か・・・・・・。」
(この人となら、安心できるかもしれない・・・・・。)
「はい!よろしくお願いします。」