「――ごめん……」

 上村から、謝罪の言葉が出た。

「斎木のこと、騙すような真似をしちまった……。けど、これだけははっきり言っとく。――俺は、本気だから……」

 そこまで言うと、上村は、私から視線を逸らし、再び歩き出した。

 その後ろを、私は少しばかり距離を置きながら着いて行く。

 前を歩く上村の背中を見つめながら、私はふと、屋台の兄ちゃんが言っていた台詞を想い出した。


『彼女にいいトコ見せてやんな』


 あれを聴いた上村は、いったいどんな気持ちだったんだろう。
 いや、もしかしたら、本当にヨーヨー釣りに集中していて聴いてなかったかもしれないけれど。

 ――上村と、私が……

 私は右手の中指に通していたヨーヨーを、そっと手の平に包みながら見つめた。

 水のように透き通る風船。
 わずかに見えるのは、中に入っている水のみ。
 薄い膜で出来たそれでは、占い師の水晶のようにこれからの未来など簡単に透視出来るわけがない。

「もう少しだけ、時間をちょうだい」

 自分にも聴き取れないほどの声で囁くと、水風船を握ったまま手を下ろした。

[水風船-End]