結局、私は最後まで上村とふたりで過ごした。

 一緒に来た友紀と友紀の彼氏は、あれから姿を完全に眩ませてしまった。
 携帯に電話を入れても出ないし、人混みを掻き分けて探すのも一苦労なので、九時を回った頃、私達はふたりだけで神社をあとにした。

「疲れた?」

 帰る道すがら、上村に問われた私は、「少しね」と口元に笑みを浮かべた。

「けど、楽しかったよ。上村君とはロクに話したこともなかったし、これからも、〈ただのクラスメイト〉で終わっちゃってたかもしれないのに、まさか一緒にお祭りを見て回ることになるなんてね」

 そこまで言うと、上村は突然、ピタリと足を止めた。

 私は不思議に思いながら、上村に視線を向けた。

「――斎木」

 少しの間を置いて、上村が口を開いた。

「俺、斎木のこと、〈ただのクラスメイト〉だなんて思っちゃいねえよ」

 上村の言葉に、私は瞬きするのも忘れて目を見開いた。

 上村は続けた。

「斎木は全然気付いてなかったみてえだけど、俺はずっと、斎木を見てた。同じクラスになった高二の時からずっと……。
 けど、斎木に接触するチャンスは全くないし、このまま、卒業を待つしかねえかと思っていたら、あいつらが、斎木と仲良くなるきっかけを作ってやる、って。――あいつらは、どうやら俺が斎木が好きだってことに勘付いてたらしいから……」

 私は何も言えなかった。

 今日のことは、友紀達が予め計画を立てていた。
 それは分かった。
 別に怒りも湧かない。
 けれども、〈ただのクラスメイト〉だった上村からの告白には、喜びよりも戸惑いを覚えた。

 ――どうしたらいい……?

 自分の中の自分に問うも、答えなど出るはずもない。