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 人混みを掻き分けつつ、私と上村は一軒ずつ出店を見て回った。

 その中でも、やっぱり食べ物の匂いは魅惑的だった。
 お腹が空いていたのもあり、買っては食べ、買っては食べ、を飽きることなく繰り返す。

 あれから上村もよく喋ってくれたので、緊張も解け、一緒に過ごす時間が楽しくなっていた。

 そんな時、私はふと、あるひとつの出店に目が留まった。

「ヨーヨー釣りだ」

 ポツリと零した私の言葉に、上村も反応する。

 私達の目に飛び込んだのは、ゴムの付いた小さな風船が水に浮かんでいる光景。
 そこでは、小学生ぐらいの子達が群がり、プラスチックと紙で出来た簡素な釣り針を使って、それらを釣り上げようと真剣になっている。

「やりてえの?」

 上村の問いに、私は「さあ」と首を捻った。

「何となく気になるけど、凄いやりたいわけでもないし」

「何だそりゃ」

 上村の突っ込みはもっともだと思う。
 言ってる張本人が、どっちなんだよ、と突っ込みを入れたい気持ちなのだから。

「ああっ!」

 突然、ヨーヨー釣りをしていたうちのひとりが大声を上げた。

「んだよお……! せっかく二個取れそうだったのに……」

 ブツクサとぼやいている男の子に、屋台の兄ちゃんが、「残念」と歯を見せて笑う。

「まあでも、一個は釣れたんだし」

「そうだけどさあ……」

 男の子は、まだ不満を言いたそうにしていたけれど、結局は諦めたらしく、唯一釣れたヨーヨーを手に、黙ってその場から立ち去った。