高校最後の夏休み、私は親友の友紀(ゆき)に誘われて夏祭りに繰り出すこととなった。


『いい? 当日は絶対に浴衣を着てきなよ』


 そう念を押されていたので、正直、面倒臭いと思いながらタンスの奥に眠っていた浴衣を出し、お母さんに頼んで着せてもらった。

「それにしても、どういう風の吹き回し? あんたが自分から『浴衣着たい』って言い出すなんて……」

 やっぱり、お母さんも疑問に思ったらしい。

 私は苦笑いを浮かべると、「友達に言われたから」と答えた。

「なんか知らないけど、浴衣着て来い、って強く言われた」

「なるほどねえ」

 何が『なるほど』なのかは分からないけれど、私が浴衣を出した理由だけは納得したようだ。

「ま、とにかく、あんまり遅くならないようにするのよ?」

 母親はそう言うと、最後の仕上げとばかりに、結ばれた帯を、ポンと叩いた。