「ですから、恋人とケンカすれば、悲しくなっても仕方ないと思うんです。でもほら、『雨降って地固まる』って言いますし、あまり気にしない方がいいですよ」
――ちょっ、ちょっとまって。今、なんて言った、この人。
恋人とケンカって。私と晃ちゃんが、恋人ってこと?
「ちがっ……、違うよ、リュウくん!」
どこをどうしたら、そういう誤解が生じるのだろう?
優花は、リュウの激しすぎる誤解を、両手に握りこぶしを作って思いっきり否定した。
「……え? 違うんですか?」
キョトンとした表情で目を瞬かせるリュウに、優花は断固として真実を告げる。
「うん、違うっ! 晃ちゃんは恋人じゃなくて、ただの幼なじみだからっ」
「オサナ……?」
――えーい、幼なじみって英語でなんていうんだっけ?
「He is a Friend since……、えーっと、子供のころからだから、From childhood.……でいいのかな?」
学校の英語の勉強自体は嫌いではないが、生の会話となると勝手が違う。
それでも、不思議そうに小首をかしげるリュウに、優花はあまり豊かではない英語力を駆使して説明を試みた。結果。
「Oh! そうですか。コウとゆーかは、ただの友達なんですね!」
ニッコリ、と。
満面の笑みで、リュウは優花の言わんとすることを、どうにか理解してくれた。