消しようのない既視感は、不安の種を大きく膨らませていく。
どうしても夢に引きずられてしまう。
そんな自分の思考を振り切るように、優花がギュッと唇を噛んだその時。
「おーい、御堂! 人数足りないから、お前Cチームに入ってくれ!」
体育教師の鶴の一声が、無限ループしそうな玲子と晃一郎の舌戦に、終止符を打ってくれた。
「なんで俺が……」
とブツブツと口の中で文句を言いつつ、優花の隣から立ち上がろうとしなかった晃一郎は、玲子に引きずられるようにコートに引き出されて行く。
その姿を、優花は、ぼんやりと目で追った。
皆から少し離れた壁際に残されたのは、優花とリュウの二人。
「隣に座ってもいいですか?」
ニコリと柔らかな笑顔で問われ、優花の鼓動はドキリと跳ね上がった。
異性に対する恋愛感情的なものからではなく、そこに宿る既視感に、跳ねた鼓動は変なふうに乱れてしまう。
向けられる瞳は、深い海の底のような、ディープ・ブルー。
すべてを優しく包み込んでくれそうな包容力のある、この深い瞳の色。
やはり、知っている気がする。
「あ……、うん。どうぞ」
コロンだろうか?
微かな柑橘系の香りを身に纏って、優花の隣にフワリと腰を下ろしたリュウは、愉快そうにコートに視線を走らせながら予想外のセリフを吐いた。