――やっぱり、晃ちゃん、いつもと違う気がする。
俺様で、少し意地悪な物言い。
これじゃまるで……。
「おーい。本当に大丈夫か?」
無反応な優花の頭を、晃一郎が手のひらでぐりぐりと無造作にかき回す。
大きな手のひらの温もりを感じた、その途端だった。
何かが、優花の中の琴線に触れた。
なんだか分からない大きな感情のうねりが、せきを切ってあふれだす。
ポロリ――。
「……あれ?」
ポロポロポロリ。
優花の頬の稜線を、涙の雫が伝い落ちる。
いったんあふれだした思いは、涙となって後から後から零れ落ちて、とめどない。
「ちっょ、どしたの優花!?」
ぎょっとしたように玲子が顔を覗き込んでくるが、優花自身もワケが分からないのだ。
胸の奥が苦しくて、切なくて、ただ涙があふれた。
「あーあ。御堂ってば、何、優花をいじめてんのよ?」
ジトリと、冷たい視線を投げつける玲子のセリフに、晃一郎は憮然と口を開く。
「別に、いじめてなんかない」
「だって、優花、泣いてるじゃないのよ?」
尚も、責めるように睨む玲子とひたすら涙を零す優花へ交互に視線を走らせ、晃一郎は、困ったように鼻の頭をかいた。
「……悪い。今の、痛かったか?」
「ううん……」
涙で濡れた頬を手の甲でゴシゴシぬぐい、優花は笑おうとしたが、うまくいかない。
――やだ、もう。
なんで、こんなに泣いてるんだろう、私?
自分で自分の感情がコントロールできないなんて、初めてで。情緒不安定も、いいところだ。
わけが分からない。
分かっているのは、この涙の原因が何なのか。
その答えはたぶん、あの夢の続きにあるということだけ――。