「ありがとう……」
重ねられている手の温もりがやたらと胸にしみて、なんだか、鼻の奥がツンとしてしまう。
「あ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど……」
気を紛らわせようと、さっき博士に聞きそびれていたことを、玲子に質問してみる。
「なに?」
「あのね、ここの世界の、優花――さんの事を聞きたいなぁって思って」
一瞬、玲子の手にビクリと力が込められ、すっと優花の手から離れた。
「玲子ちゃん?」
「うん、そうだよね。気になるよね……」
晃一郎にはあれ程、歯に衣を着せぬはっきりした物言いをしていた玲子が、とても言いにくそうにしている。
その様子に、優花の心の奥で嫌な予感が、雨雲のように膨れ上がった。
――まさか。
まさか、ここの優花は……。
少しの沈黙の後、玲子はゆっくりと口を開いた。
「優花は、死んだの……」
静かに落とされた言葉に、優花は息をするのも忘れて、聞き入った。
「一年前、政府要人を狙ったテロに巻き込まれて、死んでしまったの。その場に居た、恋人である御堂の目の前でね……」
――政府要人を狙ったテロに巻き込まれて、死んだ……?
その場に居た、恋人、晃ちゃんの目の前で?
静かに、そして残酷に。
告げられたその事実は、あまりにも重かった――。