「そうなのよねぇ。あの無邪気な少年のような瞳で言われたら、さすがのアタシも、反論できないわぁ。無自覚な乙女キラーなのよね、あのおじさま。愛妻家で子煩悩なのもポイント高いし……」
ベッドサイドのパイプ椅子に陣取った玲子はそう言って、ベットに横たわる優花に向かって、うんうん頷いている。
「あ、あの……」
考えていることに反応して答えてくる、ということは、やっぱり。
「ああ、アタシも一応超能力者の端くれなの。最も、全人類で一番多い最低のFランクのテレパス、って、こうして他人の心を読むくらいしかできないんだけど。ごめんね、勝手に心を読んじゃって。マナー違反だね」
そう言って、玲子はエヘっと舌を出した。なんだか、晃一郎と同じようなことを言うので思わず笑ってしまう。
「あ、ううん、いいの。そんなに大したことは考えてないから」
あははと、手を振ろうとしたら、手が少ししか上がらない。
――そうだった、私の体は、リハビリが必要だったんだ。
一連の様子を見ていた玲子は、力なく胸の上に投げ出してしまった優花の手に自分の両手を重ね、励ますようにギュッと力を込めてくれた。
「不安だと思う。けど、博士も御堂も、アタシもついているから。イレギュラーでも、あなたは優花。アタシの親友なんだからね。それを忘れないでいて」
真っ直ぐな瞳に、嘘や偽りは見えない。
そう、優花にだって分かっている。
彼女はこの世界で初めてあった人。でも、この人の魂は、確かに優花の親友の玲子と同じものだ。
信じていい人だ。晃一郎や博士と同じように。
それは、理屈ではなく、優花の魂がそうだと感じていた。