「じゃ御堂君、優花ちゃんを、ベッドに寝かせてあげてくれるかな」
ニッコリ笑顔で博士に指示されても文句を言うでもなく、素直に「はい」と真面目くさった顔で答えると、晃一郎は優花をベッドに横たえた。
「……やはり、四肢の運動能力の回復には、リハビリに時間がかかりそうかな?」
手足にうまく力が入らないのを見て取ったのか、博士が思案気にそう言うと、なぜか晃一郎が、「はい、特に右手足が弱いですね」と、又も真面目くさった表情で答える。
――右手足が弱い?
どうして晃ちゃんが、そんなことを知っているの?
浮かんできたのは、さっきのセクハラ行動。
もしかして、あれで気付いたのだろうかと考えたが、優花自身は、ただ手がうまく上がらないだけしか感じなかった。
チラリと、博士の傍らに立つ晃一郎へと首を動かして視線を走らせると、やはり至極真面目な表情を浮かべている。
さっきまでのセクハラ大魔王と、今の晃一郎の、あまりのギャップの大きさに戸惑っていると、博士から声がかった。
「優花ちゃん、三十秒ほどですむから、体を楽にしてそのままでいて下さい」
「は、はい!」
視線を戻して、横たわったまま少し緊張気味で頷くと、博士はベッドヘッドに備え付けられた小型のキーボード状の端末を、軽やかに操作した。