「念じるだけで勿体に物理的効果を与える現象をPK又はサイコキネシスというんだ。今、俺が使っているのがこのPKだ」

 ニッコリ、満面の笑顔を向けられて、優花の頬は盛大にひきつる。

「で、心を読むのがテレパシー、精神感応で、他にも予知とか透視とか、エトセトラエトセトラ……」

「こっ、晃ちゃんっ! なんでも良いから早く降ろしてっ!」

 浮遊感に堪え切れずそう叫んだ瞬間、今度は体がすうっと横にスライディングして、ぎゃっ! っと情けない悲鳴を上げてしまった。

 なに? なんなの? この位置関係!

 晃一郎の膝上、五十センチ。

 真上に浮かんだまま、優花は涙目になりながら晃一郎を見下ろした。

「信じた?」

 こくこくこく。

 必死に頷き、早く降ろしてと目で訴える。

「それは良かった」

「ひゃっ!?」

 フッと浮遊感が消えた次の瞬間、今度は真下に自由落下で、声がひっくり返った。落ち行く先は、両手を広げて待ち構える策士様の、膝の上。

ナイスキャッチでお姫様抱っこに収まり、にっこり満面の笑みを浮かべる整った顔をまじかで見て、優花は悟った。

 この人は晃ちゃんだけど、私の幼なじみの晃ちゃんではない、と。

 そして、信じざるを得ないこの事実。

 どうやら、優花はパラレルワールドに、迷い込んでしまったらしい――。