「悪い。本当は勝手に他人の心を読むのは、マナー違反なんだ。でもお前の思考って無防備っつうか、ダダもれ……」
ゴニュョゴニョと語尾を濁しつつ、困ったように鼻の頭をポリポリかく晃一郎の顔を、穴があくほど見つめる。
――ま、まさか。
夢うつつの中で感じた晃ちゃんの手の温もりと、頭に直接響いてくる不思議な声。
苦しさが見せた幻なんだと思っていたけど、本当に心が読めるなんてこと……。
「あるんだな、これが。正真正銘、俺は心が読める。ついでに言うとESP――、超能力全般の特A級の能力者なんだ」
「……」
「その顔は、信じてないな?」
信じろって言われても。
十五年培ってきた一般常識が、『そりゃあ嘘でっせ』と邪魔をする。
「あははは……」
と、全てを冗談にしたいと切に願いつつ、乾いた笑いを浮かべていたら、突然体がフワリと浮いて全身見事に固まった。
ベッド上、三十センチ。
フワリ、フワフワ。重力なんて何のその。
私は、空飛ぶ妖精さん?
と、危ないほうに思考が逃げかけて必死に気を取り直し、晃一郎の方にキッと鋭い視線を投げる。
でも晃一郎は動じるそぶりもなく、むしろ楽しげに、ベッド脇のパイプイスに鎮座したまま両腕を組んでうんうん頷きながら、なんと超能力の講釈を始めた。