「それでも、やっぱり優花なんです。イレギュラーでもなんでも、間違いなく優花なんです!」

「御堂君……」

「博士。もしも今、ここに瀕死の状態で横たわっているのが博士の奥さんでも、美咲さんでも、それでもやっぱり見殺しにしますか? できますか!?」

 今まで必死で抑えていた感情のタガが弾けてしまったような激しい言葉に、博士は長い溜息を吐き出した。

「痛いところを突くね、君は」

「……」

「そうだね。私が君でもやはり、今の君と同じことをするだろうと思うよ。分かった、薬を投与しよう」

 ハッと息を飲むような気配の後、聞こえてきた「ありがとうございます!」という晃一郎の声がすうっと、遠のいていく。

 次に意識が浮上したのは、全身に走った激しい痛みのためだった。

「うっ……あぅっ!」

 我知らず、苦痛の呻きが口をついて出る。痛い、なんて生易しい言葉じゃ追いつかない。

 こんな、全身を突き抜けるような激痛を、優花は知らない。

 特に右半身。右側頭部、右肩、右腕、右足に、まるで鋭い刃物で切り付けられているような、激しい痛みが走った。

 瞼の向こうに光を感じても、開けることができない瞳から、とめどなく涙が溢れて頬を伝い落ちる。

 ドクン、ドクンと、心臓が脈打つごとに増していく激痛から逃れようと体をよじるけれど、拘束されているのかピクリとも動けず、全身を走り抜ける痛みにただ身もだえするしかできない。